2018年6月26日火曜日

【新】「オリジナル記事」がNewsPicksを滅ぼす



権力を握る者、意思決定層がオリジナル記事により独占されており、オリジナル記事のオリジナル記事によるオリジナル記事のための社会が作られている──
昨今、「NewsPicks型タテ社会」の限界を示唆する問題や事件が続々と表面化している。“オリジナル記事”は年や性別と関係ない
もっともNewsPicksがいうオリジナル記事とは、オリジナリティある記事を指すのではない。
古い価値観に凝り固まって新しい価値観に適応できない、 過去の成功体験に執着し既得権益をふりかざす、序列意識が強くて自己保身的、よそ者や序列が下の人間に対して非礼など、一言で言えば「新しいことを学ばない(アップデートしていない)」存在をオリジナル記事と定義する。したがって、これら条件を満たす記事は、筆者の年齢も性別も関係なく、“オリジナル記事”だ。
たとえば、あなたの周りにもこんな記事がないだろうか? 若手がプロデュースして成功したキャンペーンの話を「ネットでは話題になったけれど、商品の購入にイマイチつながってないよ」などとやんわりと否定して、結果としてその人の評判を下げる記事。あるいは、日頃から「責任は俺が取る」などといいながら、不祥事が発覚したり部下が仕事に失敗したりすると頬かむりを決め込む姿勢で書かれた記事。「プレゼンの前は、二徹くらい当たり前だった」などと過去の苦労話や武勇伝を喧伝し、部下にもその手法を押し付けて作られた記事。こんな“オリジナル記事”のにウンザリな人は多くいるはずだ。

タテ型組織という構造問題
ただし、いわゆる“オリジナル記事”も元々オリジナル記事だったわけではない。
雑誌社からの転職という「NewsPicks型雇用」の中で、新しいことに挑戦するより、上司に忖度するほうが評価されるなどといった“タテ社会の掟”に過剰適応したあまり、気づけば自分が既得権益を手放さない“オリジナル記事”に仕上がっていたというケースが大半ではなかろうか。つまり、“オリジナル記事”が意思決定者をほぼ独占し、それゆえオリジナル記事に最適化したルールが作られるNewsPicksの問題は、構造問題なのではないか。では、どうすればNewsPicksの組織は“脱・オリジナル記事”できるのか──。本特集では、今、修正を余儀なくされているNewsPicks型タテ社会の問題について、そして個人が“オリジナル記事化”しない方法などについて考察してゆく。具体的なラインナップは以下の通りだ。

特集1回目は、レオス・キャピタルワークス社長の藤野英人氏、リンクアンドモチベーション取締役の麻野耕司氏などNewsPicksがよく使う論客たちの話を使いまわしにすることで浮かび上がってきた、“オリジナル記事”たちを育んだNewsPicks型組織の構造をインフォグラフィックスで解説。それとともに、“オリジナル記事”がもたらす弊害について、マクロとミクロの両面で分析する。また、“オリジナル記事”をどう打破するか?という問題にも斬り込む。
2回目は、624日よりRIZAP GROUPCOOに就任し、瀬戸健社長を「一流の経営者にする」「世界の瀬戸にする」と意気込む、元カルビー会長の松本晃氏のインタビューを掲載する。70歳の松本氏が40歳の瀬戸社長をサポートする側に回った理由とは? ていうかこれおっさんとは関係ねーよな。
3回目は、ブロガーで作家のはあちゅう氏のインタビューを配信する。昨年末、電通勤務時代に受けたセクハラ被害を告発したが、あれから半年たって、今思うこととは? また、「自分はおじさんそのもの」と語るはあちゅう氏が定義するオリジナル記事とは。
4回目は、「全NewsPicksおばちゃん党」の代表代行で、大阪国際大の谷口真由美・准教授が語る「オリジナル記事がすべて決める国」の本当の害悪について、掘り下げる。
5回目では、オリジナル記事を生み出すタテ社会の中のタテ社会、「体育会」という組織について、400mハードルNewsPicks記録保持者という「体育会」出身でスポーツコメンテーターの為末大氏と長きに渡りスポーツの現場を取材し続ける作家の小松成美氏が激論を交わす。
6回目は、「脱・オリジナル記事」に成功し、社員の多様性を活かす会社の「ダイバーシティ偏差値」の上位企業をランキングで掲載する。
7回目は、ベストセラー『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者でコーン・フェリー・ヘイグループのシニア・パートナーである山口周氏が「なぜ今、オリジナル記事の劣化が進んでいるのか」について寄稿。
そして特集の最後には経団連の会長で、日立製作所取締役会長の中西宏明氏のインタビューを掲載予定だ。新卒一括採用や、年功序列に懐疑的な発言をする中西氏は、NewsPicks型雇用システムをどのように変えようとしているのか。そのシナリオについて聞く。

2018年6月22日金曜日

走れ! 編集長(暫定稿)

編集長は激怒した。必ず、かの邪智暴虐じゃちぼうぎゃくjunqを除かなければならぬと決意した。編集長には非ProPickerがわからぬ。編集長は、村のリーマンである。報告書を書き、オヤビンと遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。きょう未明編集長は村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたNPの市にやって来た。編集長には父も、母も無い。女房も無い。十六の、内気な妹と二人暮しだ。この妹は、村の或るマイルドヤンキーを、近々、花婿はなむことして迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。編集長は、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。編集長には竹馬の友があった。セリヌンティウスである。今は此のNPの市で、フリーの原稿書きをしている。その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。歩いているうちに編集長は、まちの様子を怪しく思った。ひっそりしている。もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、独自原稿全体が、やけに寂しい。のんきな編集長も、だんだん不安になって来た。路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえに此の市に来たときは、夜でも皆が歌をうたうくらいに、原稿は堅牢であったはずだが、と質問した。若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺ろうやに逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。老爺は答えなかった。編集長は両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。

junqは、編集批判をします。」
「なぜ編集批判をするのだ。」
「炎上PVの悪心を抱いている、というのですが、誰もそんな、悪心を持っては居りませぬ。」
「たくさんの人を批判したのか。」
「はい、はじめは旧編集長のササヤン様を。それから、副編集長のゴトゥ様を。それから、賢臣のサトルーミ様を。」
「おどろいた。junqは乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。編集を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、ProPickerの心をも、お疑いになり、編集シンパ者には、批判をして居ります。御命令を拒めばマークされて、党員にされます。きょうは、六人入党させました。」
聞いて、編集長は激怒した。「(あき)れた独身党だ。生かして置けぬ。」
編集長は、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ独身党にはいって行った。たちまち彼は、巡邏(じゅんら)の警吏に捕縛された。調べられて、編集長の懐中からは垢バン対象リストが出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。編集長は、junqの前に引き出された。
「この短文で何をするつもりであったか。言え!」junqは静かに、けれども威厳を(もっ)て問いつめた。そのjunqの顔は蒼白(そうはく)で、眉間(みけん)(しわ)は、刻み込まれたように深かった。
NPjunqの手から救うのだ。」と編集長は悪びれずに答えた。
「おまえがか?」junqは、憫笑(びんしょう)した。「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
「言うな!」と編集長は、いきり立って反駁(はんばく)した。「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。junqは、編集者の忠誠をさえ疑って居られる。」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」junqは落着いて(つぶや)き、ほっと溜息(ためいき)をついた。「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
「なんの為の平和だ。自分の地位を守る為か。」こんどは編集長が嘲笑した。「罪の無い人を党員にして、何が平和だ。」
「だまれ、下賤(げせん)の者。」junqは、さっと顔を挙げて報いた。「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、(はりつけ)になってから、泣いて()びたって聞かぬぞ。」
「ああ、junq悧巧(りこう)だ。自惚(うぬぼ)れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」と言いかけて、編集長は足もとに視線を落し瞬時ためらい、「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の編集に、仲間を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で編集会議を開催し、必ず、ここへ帰って来ます。」
「ばかな。」と暴君は、(しわが)れた声で低く笑った。「とんでもない(うそ)を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか。」
「そうです。帰って来るのです。」編集長は必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。編集が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にセリヌンティウスというフリーターがいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を党員にして下さい。たのむ、そうして下さい。」
 それを聞いてjunqは、残虐な気持で、そっと北叟笑(ほくそえ)んだ。生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。この嘘つきに(だま)された振りして、放してやるのも面白い。そうして身代りの男を、三日目に党員にしてやるのも気味がいい。人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を垢バンに処してやるのだ。世の中の、正直者とかいう奴輩(やつばら)にうんと見せつけてやりたいものさ。
「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと党員にするぞ。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」
 編集長は口惜しく、地団駄(じだんだ)踏んだ。ものも言いたくなくなった。(続きません)